ラベンダーの咲く庭 LavandeBleu

日々のRFAを記録したり雑談したりするブログです

前に仕事に関わる話を書いても何の面白みもなかったのでもう書くの控えようかなと考えてたんだけど、これから書くネタは、DTP制作の仕事をやる以上は欠かせないもののはずなのにネット上(例えば2chのスレとか)では話題になってるのをあまり見た事がない、というちょっと珍しい類の話かもしれないと思ったので書いてみようと思う。

データにまつわるあれこれな話です。

 

 

データの話をする前に、制作のお仕事内容を大雑把に分類すると以下のようになると思う。例によって個人の経験によるものなのでどこの会社でも当てはまる話ではないっす。

 

・新規組版、デザイン

客から提供されるものが紙媒体とか口説明のみ。もしくはワードなどの文字原稿データからデザイン・レイアウトを起こして流し込む、というふうに完全に一からDTPデータを作りあげる作業。この仕事の中では一番大変だけどやりがいはそれなりにあるし、これを一人で出来る程度になればやっと半人前くらいかなというのが弊社でいう「DTP経験者」の定義だろうか、具体的にはIndesignとかQuark使って頁物の組版出来る人。

 

・一部修正(前回データ有り)

年間のお仕事のうち8割ぐらいがこれ、基本的にはお客さんが元の印刷物のコピーとかに赤字を入れて修正指示をくれる、それをその指示通りに作業する。一部修正と言いつつ100ページのうち20ページぐらい全面的に差し替え(=作り直し)とかいうクソ原稿もざらにある。余談ですが修正指示の入ったものを「見え消し原稿」と呼ぶ、弊社だけかもしれない。仕事としてはこのパターンが一番楽な部類。なおこの前回データというのがクセモノなので後述する。

 

・一部修正(前回データなし)

一番やっかいな仕事のパターン、原稿指示の入り方は上のデータあり一部修正と同じだが、前回のデータが無い=1から作るというのと同義のためコストがかかる。具体的に言うと文字入力が必要になるのと前回の印刷物をトレースしたレイアウトを作らなければならない点がつらい。

 

ここで言う「前回データ」とは、もちろん印刷物の版下データのこと。以前も書いたように、ワードやエクセルのデータは版下データとは呼ばない、主にIndesignやillstlatorのDTP用途データがこれ。

また、ここ数年で多いのがPDFデータを版下データとして支給するタイプだが、これも厳密には版下ではないです、PDFは基本的に編集不可のデータのため、印刷用途としては使い辛いからです。

但し、PDFは最終的に製版・刷版に使われるデータ形式でもあるため、この辺を混同してる人が非常に多い現実がある、特に制作現場を経験してない営業マンがマジで無知。制作現場の人間にも区別が出来ていない人は残念ながらかなり多いので何かホント勉強して欲しい。この辺の話を絡めると更にややこしくなるからここでは深くは言及しません。

 

我々DTP制作現場にとっての生命線とも言えるのが版下データで、これの有無で仕事の難易度が天と地ほどに変わる。なので作業終了したデータは即サーバに保管する、言わば会社の財産である。昔はメディアに焼いてたけどね、今はもう個人の処理件数が桁違いなので無理、ほんとはサーバとメディアの二重対策が良いのだけどね。

最初に書くべきでしたが、版下データの容量は1件あたり数百MBから数GBと、かなり嵩張るものです。動画編集に比べたら可愛いもんですけど、上述のように全て半永久的な保管が必要なことを考えるとサーバコストだけでもかなり頭が痛くなる。年間ごとに数百件単位で増えるんです。

 

 

前置きが長くなりましたがようやく本題です。

このように版下データは非常に大事なものであるものの、意外に著作権という観点ではほとんど意識されていないように思う。というより基本的には発注元、つまり客先の仕様書に「作業完了後、版下データを納めて著作権を委譲すること」などという書き方をされている。つまり厳密にいうと制作した側(制作会社やデザインした本人)は著作権を主張できないんですよね。

極端な事を言えば、制作したデータを保有している自社で、あるいは新たな契約先で、その版下データを使って勝手に印刷物を刷って販売されてしまう、または商用目的に再利用されてしまうというのを防ぐために、建前上は「データの著作権を契約先に譲るよ」というのを誓約しなければならないのだと思う。

昨今はソシャゲが普及してデータのやり取りが非常に増えたせいか、イラストレーター個人と会社との間で揉めごとになってるのも多いみたいですね。単に契約書(仕様書)を交わしてないだけかもしれないけど。

ただ、弊社なんかの場合、官公庁向けの印刷物であるという前提があるので、その客のために作った版下データを仮に勝手に刷ったとしても利益が出る見込みとかは皆無だし、あんまり著作権云々は意識してないっていう。もしこれが雑誌とか書籍とか新聞とかのデータの場合は、その辺どうなってるんでしょうね。データは都度破棄しろとか言われるのかな。

 

著作権は作成者本人には無いものの、仕事の履歴としては残す。職務経歴書に書いたり面接時に冊子とかチラシとかのコピーをポートフォリオに入れて持参する(データ自体のコピーを所持するのはNG)、という辺りは暗黙の了解というか、たぶん許されてるとは思うし、別にそれで困ることはない。イラストについてもたぶん似たようなものに落ち着いてるのだろうな、他社に提供したものを使って自分で商売するとかは出来ないようになってるはず。契約書って大事ですね。

 

話がだいぶデータから離れてしまったけれど、データの所在についてはあまり議論されてないふうに思う。だいたい皆似たような結論に至ってるのね、たぶん。

 

さて、データにまつわる話としては「データ自体にお値段付けるといくらなの?」というネタで書くのも面白そうだなあ。僕はデータ制作業務を主にする会社に勤めてる事になってるんだけど、実はその隣室というか同じフロアで区切ってるだけの別会社の制作部っていうのが実際の立場なんすよね。あまり公にできない事情があるらしいのでいえませんが、ともかく、一応経理上は「データ制作業務」をその別会社から売り上げとして計上してるみたいなんだけどねー大雑把な金額は追えても本来の相場的なものは詳しく知らないんだよねー。で、何となく・・・という適当なさじ加減で外部の制作会社と打ち合わせしてるのが現状なので、もうちょっとキチンと考えたりしたいんだよねー。

あ、ちなみに別会社云々はココだけのオフレコねー。あんまり言うとゼニー的なポリスメンなアレとかがバーヤイらしいんだよねー。おわり!